腰痛治療において
腰部の安定性を高めるために体幹部のトレーニングをする
ということが長年の定番となっています。
その中でも体幹トレーニングの代名詞となっているのが
腹圧を高めるトレーニングです。
腹圧を高めるのは確かに腰部の安定性にとって非常に重要な要素ですが
それだけでは腰部の安定性を確保できません。
実際に腹圧だけで腰部の安定性を獲得しようと思ったら
腹部大動脈の血流を止めるくらいの圧力が必要な上に
腹部の筋断面積を考慮すると
それだけの圧力をかけるだけの筋力を発揮することは不可能
ということがわかっています。
なので、腰痛予防のためにせっせと腹部を鍛えていても不十分であり
それ以外の安定化システムを獲得しなくてはいけません。
そこで今回は腰部の安定化システムの１つである
対側の大殿筋と広背筋の張力伝達についてお話しします。
腰部に安定化には胸腰筋膜による伝達を獲得しよう
大殿筋と広背筋の間には何があるでしょうか？
そう胸腰筋膜です。
この胸腰筋膜によって
対側の大殿筋と広背筋の収縮が伝達されることで
腰部や仙腸関節に安定性を生み出しています。
しかし、腰痛の方の中には
この伝達がうまく働かずに腰部が不安定になっている方がいます。
そして、この不具合は筋力の問題ではないためアプローチには少しコツが入ります。
胸腰筋膜による腰部安定化システム ２つの異常パターン
この伝達がうまくいかない人は
２パターンがあります。
それは
大殿筋の収縮が同側の広背筋に伝わってしまっているパターン
と
同じく大殿筋の収縮が同側の大腿筋膜張筋に伝わってしまっているパターン
です。
この２つのパターンは筋力ではなく、周辺の軟部組織の過緊張や癒着が原因となっているため
徒手療法が有効です。
では、どのようにアプローチするのか。
まずは前者の同側広背筋に伝わってしまうパターンの場合は
大殿筋の仙骨への付着部周辺、仙腸関節周辺から同側広背筋に向かって
マッサージなどでアプローチしましょう。
この部位の過緊張や癒着を取り除くことで、同側広背筋への伝達をカットし、対側広背筋に収縮が伝わりやすくなります。
次に後者の同側の大腿筋膜張筋へ伝わるパターンですが
こちらは腸脛靭帯を介して伝達が伝わってしまうので
大転子周辺で腸脛靭帯にマッサージなどのアプローチをしましょう。
この時に大腿筋膜張筋へもアプローチしてあげると、より効果的です。
このようなアプローチしていくと
対側の大殿筋と広背筋の伝達による腰部安定性を獲得できますので
ぜひお試しください。
これでダメならば、運動療法をしていくのですがそれはまた別の機会にしましょう。
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